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【獣医師監修】猫の甲状腺機能亢進症とは?症状・検査・治療について解説

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甲状腺機能亢進症は、甲状腺が腫れて大きくなり、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで起こる全身性の病気です。高齢猫に多くみられる代表的な内分泌疾患とされています。
「食欲が旺盛になった」「以前より活発になった」といった、一見すると健康的に思える変化から始まることもあります。しかし、体内では代謝が過剰に高まり、心臓をはじめとする全身の臓器に負担がかかっています。
早期には病気と気づきにくいため、高齢猫では症状がなくても定期的に健康状態を確認することが大切です。
今回は、甲状腺機能亢進症について解説します。ぜひ最後までご覧ください。

猫の甲状腺機能亢進症とは

甲状腺は首の周辺にある器官で、甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンには、体のほとんどの組織に作用し、エネルギー産生や体温、心臓の働きなどを高める役割があります。
甲状腺機能亢進症になると、このホルモンが必要以上に分泌され、全身の代謝が異常に活発になります。
そのため、初期にはよく食べ、よく動くようになり、病気とは気づかれにくいことがあります。しかし、過剰な代謝が長く続くと体が消耗し、次第に筋力低下や臓器への負担が目立つようになります。
甲状腺の異常として多く認められるのは、片側または両側の甲状腺に生じる機能性腺腫様過形成です。

10歳以上の高齢猫で注意したい病気

猫の甲状腺機能亢進症は、中年齢から高齢の猫に多く、大阪府と中国地方の動物病院に来院した8~20歳の猫112頭を調査した研究では、10頭、全体の8.9%が甲状腺機能亢進症と診断されました。
東京中心部で10歳以上の猫を調べた別の調査でも、112頭中12頭、10.7%が認められています。
これらは限られた地域や来院猫を対象とした調査であり、すべての高齢猫の有病率を示すものではありません。
しかし、日本でも決してまれな病気ではないことを示しています。

猫の甲状腺機能亢進症でみられる症状

典型的な症状は、よく食べるのに体重が減ることです。甲状腺ホルモンによって代謝が過剰になるため、食事から得たエネルギーを多く消費し、食欲が増していても痩せていきます。
そのほか、次のような症状がみられることがあります。

  • 食欲の増加
  • 体重減少
  • 活動性の増加
  • 落ち着きがなくなる
  • 神経過敏や攻撃的な行動
  • 鳴き声が増える
  • 多飲多尿
  • 嘔吐や下痢
  • 被毛の光沢低下や脱毛
  • 暑さに弱くなる
  • 心拍数の増加
  • 筋力の低下

進行した猫では、食欲低下や元気消失がみられる場合もあります。

前述の調査では、甲状腺機能亢進症と診断された猫の60%に体重減少、50%に嘔吐、40%に食欲低下が認められました。
一方、多食や多飲多尿、神経過敏・攻撃的行動は、それぞれ10%でした。典型的な「食欲旺盛で活発」という症状が必ず現れるわけではない点にも注意が必要です。

元気そうに見えても病気が進んでいることがある

甲状腺機能亢進症はゆっくり進行し、食欲や元気が比較的良好に保たれることがあります。
そのため、体重が減っていても「高齢だから」「食べても太らない体質になった」と考えられ、発見が遅れることがあります。
「以前よりよく遊ぶ」「急に甘えるようになった」「落ち着きがなくなった」といった変化も、単なる性格の変化ではない可能性があります。
特に高齢猫で食欲と体重が釣り合わない場合は、早めに動物病院へ相談することが重要です。

甲状腺機能亢進症の検査と診断

診断では、症状や身体検査の所見に加え、血液検査で甲状腺ホルモンの一種である総サイロキシン(T4)を測定します。
典型的な症状があり、血清T4濃度が基準値を上回っていれば、甲状腺機能亢進症と診断されます。
首を触って腫れた甲状腺を確認できることもありますが、触れないからといって病気を否定できるわけではありません。
また、軽症例やほかの病気を併発している猫では、甲状腺機能亢進症であってもT4が基準範囲内になることがあります。

症状が強く疑われる場合は、1~2週間後にT4を再測定したり、遊離T4を組み合わせて評価したりします。遊離T4は単独で診断するのではなく、総T4と一緒に解釈することが重要です。
血液検査では、心拍数の増加に加え、ALTやALPなどの肝酵素が上昇することもあります。食べているのに痩せる病気には糖尿病などもあるため、血液検査、尿検査などを通じて全身状態を確認します。

猫の甲状腺機能亢進症の治療

主な治療方法としては、以下の4つが挙げられます。

抗甲状腺薬
甲状腺ホルモンの産生を抑える薬を使用します。治療効果を維持するには、原則として毎日の投薬が必要です。薬物療法は可逆的であり、治療への反応を確認しながら調整できますが、継続的な検査と管理が必要です。

甲状腺摘出手術
大きくなった甲状腺を外科的に取り除く方法です。甲状腺の異常部分を直接取り除けますが、元に戻すことのできない治療であり、猫の全身状態を評価したうえで実施を検討します。

放射性ヨウ素治療
放射性ヨウ素を用いて、異常に働いている甲状腺組織を治療する方法です。手術と同様に非可逆的な治療法として位置づけられています。

低ヨウ素食による栄養管理
甲状腺ホルモンを作るために必要なヨウ素を制限した療法食を与える方法です。参考の調査では、低ヨウ素食だけを唯一の栄養源として与えた猫の約90%で、甲状腺機能が正常化したと報告されています。

ただし、おやつ、人の食べ物、ほかのペットのフードなどを口にすると、ヨウ素制限の効果が損なわれる可能性があります。
食事療法を選択する場合は、与える食事に配慮し、T4や腎機能を定期的に確認する必要があります。

治療後は腎機能の確認が重要

甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモンの影響によって腎臓の糸球体濾過量が増加し、もともと存在していた慢性腎臓病の検査所見が隠れることがあります。
治療によってT4が正常化すると糸球体濾過量が低下し、それまで目立たなかった腎機能の異常が明らかになる場合があります。
そのため、治療後はT4だけでなく、BUN、クレアチニン、尿比重などを継続して確認することが大切です。

まとめ

猫の甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、全身の代謝が異常に高まる病気です。
特に10歳以上の猫で多く、食欲増加、体重減少、活動性の増加、頻脈、多飲多尿、嘔吐などがみられます。
一方で、食欲低下や元気消失だけが現れる猫や、甲状腺の腫れを触って確認できない猫もいます。

「よく食べて元気だから健康」とは限らないため、高齢猫では日頃から体重や食欲、性格、活動量の変化を観察することが大切です。
治療には抗甲状腺薬、甲状腺摘出、放射性ヨウ素、低ヨウ素食による栄養管理があります。それぞれ特徴や注意点が異なるため、甲状腺ホルモンだけでなく、心臓や腎臓を含む全身状態を評価しながら治療方法を選択します。
高齢猫が食べているのに痩せてきた、急に活発になった、落ち着きがなくなったと感じた場合は、年齢による変化と決めつけず、動物病院で診断を受けましょう。

参考文献:
一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)「猫の病気 甲状腺機能亢進症」
Todd Towell「猫の甲状腺機能亢進症の栄養管理」ペット栄養学会誌, 15(1), 24–34, 2012.
宮本忠ほか「大阪および中国地方における猫の甲状腺機能亢進症の発生」日本獣医師会雑誌, 55(5), 289–292, 2002.

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監修獣医師:丸田 香緒里

◆丸田 香緒里 プロフィール

日本大学卒。動物病院勤務後、「人も動物も幸せな生活が送れるためのサポート」をモットーにAnimal Life Partner設立。ペット栄養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、メンタルケアカウンセラーなどの資格を生かし、病院での診療や往診のほかに、セミナー講師やカウンセリング、企業顧問、製品開発など活動は多岐にわたる。
HP:http://animallifepartner.com/

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