【獣医師監修】犬の膀胱炎を解説|原因・症状・治療と予防のポイント
犬の膀胱炎は、頻尿(何度もトイレに行く)や血尿、濁った尿などがみられる下部尿路の病気です。
多くはすぐに命に直結する病気ではありませんが、放っておくと腎臓まで炎症が広がり、腎盂腎炎など重い病気につながることもあるため、早めの受診が大切です。
今回は、犬の膀胱炎について解説します。
犬の膀胱炎とは
膀胱は、腎臓で作られた尿を一時的にためておく袋状の臓器です。
膀胱の内側の粘膜に炎症が起きた状態を「膀胱炎」と呼びます。
犬では細菌感染による膀胱炎が最も多く、膀胱の粘膜がただれたり、膀胱壁が厚くなって弾力を失うことがあるとされています。また、尿中にできた結晶や結石が膀胱粘膜を刺激し、その結果として膀胱炎が起こるケースもあります。
昭和初期に発表された「犬の膀胱炎」の症例報告からは、血尿や排尿時の異常が当時から臨床上の重要な問題として記録されており、膀胱炎が長年にわたり獣医療で重要視されてきた病気であることがわかります。
犬の膀胱炎の主な原因
細菌感染
犬の膀胱炎で最も多いのが、細菌が尿道から膀胱内に侵入して起こるタイプです。
通常、尿の流れや粘膜の防御機構によって、膀胱内は清潔に保たれています。しかし、体力の低下・加齢・基礎疾患・不適切な衛生状態などが重なると、防御機構が弱まり、細菌が増殖しやすくなります。
特にメス犬は、オス犬に比べて尿道が短くまっすぐなため、細菌が膀胱まで到達しやすい構造だと考えられています。
結晶・結石による刺激
尿中の結晶や結石が原因となって膀胱炎を引き起こすケースがあります。
尿中ミネラルのバランスが崩れたり、濃い尿が続いたりすると、結晶や結石が形成されやすくなります。それらが膀胱の内側をこすって傷つけることで、炎症や出血が起こります。
その他の要因
一般に、以下のような要因も膀胱炎の発症・悪化に関連すると考えられます。
- 免疫力の低下(高齢・慢性疾患など)
- 長時間の排尿我慢
- 生殖器周囲の炎症(前立腺炎・外陰部炎など)
犬の膀胱炎でみられる症状
犬の膀胱炎の症状として次のようなものが挙げられています。
- 頻尿:何回もトイレに行くが、1回の量は少ない
- 排尿困難:したそうにしているのに、なかなか尿が出ない
- 血尿:特に排尿の最後のほうで血が混ざる
- 尿の濁り:膿や細菌が混ざることで、透明感がなくなる
- 尿の悪臭:細菌感染により、いつもより強いにおいがする
これらの症状は、犬にとって痛みや不快感を伴うため、
- トイレ以外の場所で排尿してしまう
- 排尿姿勢のまま長く踏ん張る
- 陰部を気にしてよくなめる
といった様子が見られることもあります。
発熱や元気消失がある場合は要注意
- 明らかな発熱
- 食欲不振
- 元気がない、ぐったりしている
診断の流れ
- 頻尿や血尿の有無、症状の出始めた時期、過去の膀胱炎・結石の既往などを確認。
- 触診で膀胱の大きさや痛みの有無をチェック。
- 色・比重・pH
- 尿沈渣(白血球・赤血球・細菌・結晶など)
- 必要に応じて尿中の細菌培養・薬剤感受性試験
- 結石の有無や膀胱壁の変化を確認するためのX線検査や超音波検査 など
犬の膀胱炎の治療
抗生物質による治療
犬の膀胱炎では、抗生物質による治療が基本です。
尿培養・薬剤感受性試験の結果をもとに、原因菌に有効な抗生物質を選択します。治療を数週間から数か月にわたって継続しないと再発が多いとされており、症状が落ち着いても自己判断で中断せず、獣医師の指示通りに投薬を続けることが大切です。
結石がある場合の対応
膀胱炎の背景に膀胱結石がある場合には、感染を抑えるだけでは不十分であり、食事療法か外科手術行います。
食事療法
結石の種類によっては、療法食によって結石を溶解したり、再発を予防したりできる。
外科手術
大きな結石が膀胱や尿道の通過を邪魔している場合は、手術によって取り除く。
再発を防ぐために気をつけたいこと
膀胱炎は治療を短期間で中断すると再発しやすい病気であり、再発予防のために、飼い主さんは以下のポイントを意識するようにしましょう。
指示された期間しっかり薬を飲ませる
- 症状が軽くなっても、獣医師が指定した期間は抗生物質を飲み切ることが重要です。
- 途中で中断すると、細菌が生き残り、すぐに膀胱炎を繰り返してしまうことがあります。
再診・尿検査で「治りきったか」を確認する
- 見た目の症状がなくなっても、尿の中にまだ細菌が残っていることがあります。
- 再診時に尿検査を行い、細菌や炎症反応が消えているか確認することで、再発予防につながります。
結石対策(獣医師の指示に従った食事管理)
- 結石が関わっている場合、療法食などによる長期的な尿のコントロールが再発予防に欠かせません。
- 市販のフードに勝手に戻してしまうと、結石や膀胱炎が再び起こるリスクが高まります。
日常生活での配慮(一般的なケア)
- こまめにトイレに行ける環境を整える(長時間の我慢を避ける)
- 清潔なトイレ環境を保つ
- 肥満や基礎疾患がある場合は、獣医師と相談しながら全身管理を行う
まとめ
犬の膀胱炎は、細菌感染が最も多く、尿中の結晶や結石が背景にあるケースも多い下部尿路の病気です。
主な症状は、頻尿・排尿困難・血尿・濁った尿・尿の悪臭などで、通常は発熱や強い元気消失はみられませんが、もし全身症状があれば腎盂腎炎などの合併を疑う必要があります。
愛犬がいつもより頻繁にトイレに行く、尿のにおいが強くなった、そんな様子に気づいたら、早めに動物病院を受診しましょう。
参考文献:
一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)「犬の病気 膀胱炎」
橋爪敬三郎(1930)「犬の膀胱炎」Japanese Journal of Veterinary Science, 3(2), 83.
Zesty Paws
監修獣医師:丸田 香緒里
◆丸田 香緒里 プロフィール
日本大学卒。動物病院勤務後、「人も動物も幸せな生活が送れるためのサポート」をモットーにAnimal Life Partner設立。ペット栄養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、メンタルケアカウンセラーなどの資格を生かし、病院での診療や往診のほかに、セミナー講師やカウンセリング、企業顧問、製品開発など活動は多岐にわたる。
HP:http://animallifepartner.com/






